あめんぼ座の活動

人間――この愛おしき存在。山本周五郎の傑作に迫りました。

山本周五郎作 「青べか物語」

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あらすじ

世界的テーマパークで若者が歓声をあげる現在とは対照的な、昭和初期のうらぶれた漁師町、浦粕。そこに住む底抜けに逞しく質朴な人々が織りなす生活があった。その町に住みついた作家志望の青年(私)が見聞する数々のエピソードをオムニバス形式で展開する。青べかを買った話――狡猾な芳じいさんに「青べか」を買わされる私。青べかとは青く塗られた不格好なひとり乗りの平底舟のこと。

繁あね――親に捨てられた乞食少女お繁にも女としての息吹がほの見えてきた。繁あね、とはお繁姐さんと言うほどの意味。
ごったくや――札びらをみせびらかすような客はむしられても当たり前、飲み屋の女たちの活躍。

もくしょう――もくしょうとは毛ガニのこと。毛深くて毛ガニによく似ている元井エンジには悲しい恋の過去があった。

対話(砂について)――月夜の海で富なあこと、倉なあこが交わす牧歌的な会話。なあこ、とは兄貴というような意味。

貝盗人――私には横柄な浜の監視人の上手をいく貝盗人がいた。

芦の中の御一夜――芦原の中に停泊している一艘の蒸気船。ある秋の一夜私はその船に棲みついている老船長の話を聞いた。

土手の秋――ある秋の夕暮れ、土手でひとりの若者が泣いていた。

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出演
西垣瑩子・柳沢佐和子・西野孝子・泉谷聖子・南数美・藤田雅子・岩佐智秋・真木美佐緒・久保田みぎわ
演出:笙野 泉
照明:新田三郎
音響:紫垣
衣装:スタジオMO
☆地下鉄「なんば」、近鉄・南海・JR「難波」

高島屋1階の北端から、南海通に入る。1つめの四つ角を右折し、道具屋筋商店街を目指す。同商店街手前の右側、滝のあるビルがワッハ上方

地下街なんばウォークのウォーターパークから南側の地上に出て、千日前筋を南下。道具屋筋商店街を目指す。同商店街手前の右側、滝のあるビルがワッハ上方
〈演出を終えて〉笙野泉
演目の選定で、何種類かの候補をあげて議論をしましたが、最終的にこの「青べか物語」に決まった時、驚かなかったといえば嘘になります。勿論この作品は長い間暖めてきたもので思い入れも深かったのですが、原作はかなり猥雑ですし、オムニバスで綴るというのも今までやったことがないので、果たしてその切り替えがうまくいくか、またなぜいま昭和初期の関東の物語を大阪でやるのか、という疑問が出はしないか、という危惧があったのでした。しかし現実には座員からもっと猥雑な中身のほうがふさわしくはないかという意見もでましたし、ひとり三役ぐらいこなさなければならないハードさにも不満は出ませんでした。ただ長すぎないか(105分)、休憩をいれるべきではというおおかたの意見もあったのですが、それは演出として、できないと断り、もっとテンポ良くしてほしいと注文をだしました。終了後観客の皆さまからはおおむね、長すぎなかった(中には中途でしんどかった、という方もいらっしゃいましたが)、面白かったと好評をいただき、ほっとしました。
嬉しかったのは、昭和初期のうらぶれた漁師町の感じがよくでていた、原作を読んで見たくなった、読み直したくなった、という方が何人もおられたことで、アクセントがときに関西風になったとしても、作品の持つ力は阻害されないのだ、ということだなと思ったことでした。それでも演出者としては、まだまだこの作品はもっと深くなると思い、チャンスがあれば再挑戦したい気持です。ありがとうございました。
古典の日フォーラム(京都コンサートホールアンサンブルムラタ)での
劇団あめんぼ座谷崎潤一郎作「刺青」は大好評でした。

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