伊丹公演を終えて
柳沢佐和子
今回上演の第一部「赤い手」(井上ひさし作)は、前沢良子という女性の出生届から、死亡届まで、人生の節目に関わる公文書類や手紙だけで、波乱にとんだ薄倖の一生を現した作品でした。場面ごとの情景がつながって、観客の中に「女の人生」が浮かび上がってくれれば、と願っていました。本番は、昨秋の初演より演者の肩の力が抜けて全体がスムーズに流れたように思いましたが、場面の迫力が少し薄まった感じもします。ホールの大きさや照明の違いが影響するのでしょう。
第二部の「あらしのよるに」「あるはれたひに」(木村祐一作)は、そのままで十分楽しい素敵な作品なので、シンプルに仕上げました。山羊と狼のキャラクターが鍵なので、あえてダブルキャストで変化をつけ、個性を生かしてもらいました。会話の妙に客席から笑い声が沸くと、演者も更にのって・・・、会場は楽しい雰囲気に包まれました。なまの舞台の醍醐味ですね。
お客さまにはいつも熱心に聴いていただき、感謝しています。ありがとうございました。
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